これに気づいたら、一気に霧が晴れた。
私は、家で仕事をしている。家が職場なのだ。
一人だから、なんだってできる。環境も自由に変えられるし、一人で文句を言ってても誰も聞いてないので、気楽だ(けどちょっとさびしい)。
パソコンの前に座れば、ネットの向こうに人がいる。
友達づきあいもほとんどみんなネットでやっている。電話もめったにしないし、テレビも見ないし、毎日の買い物もネット、振込みもネット、飛行機や電車、ホテルの予約もネット。外に出かける必要がほとんどない。
そう、ここにいれば、なんでもできていた。
ここから出なければ、平和だった。
……それが、間違いだったのだ。
出なければ平和、なんじゃなくて、出ないから苦しかったんだ、とやっと気がついた。
一人で都内に出た。用もないのに。こんなこと、したことなかった。
本屋をふらついて、デパ地下を歩いた。
いろんな会話が聞こえた。高校生の恋愛相談とか、外人と日本人とのたどたどしい会話とか、おじいさんのひとりごととか。
私が今いる場所が、すべてではないのだ。
それに気づいたら、すごく気持ちが楽になった。
家に「帰ってきた」。
私はこの家で、暮らしている。だんなと一緒に、生きている。
そんな当たり前のことが、分からなくなっていたなんて。
今は、私としては豪華な(笑)夕食を作って、だんなの帰りを待っている。
きっと、びっくりするだろうなあ。